インド・リシケシで盲目の旅人と出会う

彼の名前はスワミ。

彼を初めて見たのはラクシュマンジュラのメインストリートだった。

f:id:ryo-saya:20170825031103j:image

サングラスをかけたスラーっとした長身のインド系の男性が盲人用の白杖を使い、歩いていたのだ。

私は日頃から白杖を持って歩いている方を見かけると、ついつい気になってしばらく危険がないか勝手に見守ったり、手助けが必要そうに見えたら声をかけて目的地までご一緒してまうなど、ついついお節介を焼いてしまうたちだ。
私のお節介は私の看護師という職業と近年の悲しいニュース(盲人が駅のホームから転落し亡くなってしまったなど・・・)が影響していると思う。

彼に目を引かれたのは彼が白杖を持ってい歩いていたという理由だけではない。彼自身がすごく魅力的だったからだ。
長身でピンと伸びた背筋。センスの良いシックな帽子。綺麗にアイロンがあてられたシャツとパンツ、汚れひとつない革靴。まさに「紳士」といういでたちだった。混沌としたリシケシの中で彼はとても目立っていた。

彼を初めて見た時、やはり私のお節介が発動しそうになった。
だって、ここはインドリシケシ。
道は凸凹だし、路上には沢山のゴミ、石ころ、牛のフンが落ちている。道路を走る車やバイクは激しいクラクションとともに歩行者がいようがいまいがおかまいなしでハイスピードでどんどん突っ込んでくる。

f:id:ryo-saya:20170825031240j:image
そんな中を盲人が歩くなんて、危険でしかないと私には感じられたのだ。

白杖をついて歩く彼を少し見守っていると、彼はすぐにバイクに乗った青年と話を始め、彼のバイクの後ろに乗って去って行った。
そんな彼の姿を見て、彼はここに住んでいるんだろうなと思った。

その数日後の朝、ヨガクラスに向かう道中でまた彼を見かけのだ。
彼は私達と同じ方向に向かって一人で歩いていた。
Can I help you?
と声をかけると、流暢な英語で
「ありがとう、友人とラムジュラ橋の近くで待ち合わせをしていて、そこに向かっているんだ 」
と言う答えが返ってきた。
私達が出会った場所からラムジュラ橋 までは約2キロ、徒歩で約30分程の距離があった。
そんな場所まで一人で行こうとされていることに驚き、
私達も同じ方向へ行くのでご一緒しましょうと話し、一緒に歩き出した。

目的地に着くまでの間、色々な話をした。

彼はなんと旅行者だった。
たった一人で、スイスからやってきたそうだ。
彼はインドで産まれ海外で育ったので、自分のルーツを知りたいと思い、ここインドへやってきたそうだ。
私はたいそう驚いて、色々な質問をした。

あなたに声をかけてくる人の多くは親切な人だと思うけど、中には悪い人もいるでしょう?あなたはそれをどうやって見分けているの?
すると彼は
「うまく言葉で説明できないけどVibesかな。」
と答えてくれた。
彼は相手の顔が見えなくても、声の感じ、話し方、その人が発する空気感を感じれば大体その人が良い人が悪い人なのか分かってしまうそうだ。
「時々騙されちゃうこともあるけどね」と彼は笑っていたが、
彼が私なんかには想像もつかないような素晴らしく鋭い感覚を持っているんだろうなと感じずにはいられなかった。

「その国、その土地によって音、匂い、空気や風の感じ、全てが違うんだ。インドは色々な意味で強烈だね。」と笑っていた。

彼は全身で自分のルーツであるインドを楽しんでいるようだった。

彼はリシケシの後はヒマラヤに行こうと思っていると話していた。

インドを去った今でも、時々彼のことを思い出すことがある。
彼は無事にヒマラヤに行けたのかな?
彼は今どんな土地でどんな風にふかれているのかな?

f:id:ryo-saya:20170825025226j:image

コメント

タイトルとURLをコピーしました