「私の大好きなカンボジアを安心して旅して欲しい」カンボジアで働く日本人看護師 塚本和子さんインタビュー

妻です。 

カンボジアのシェイムリアップで滞在していたホテルで、こんなチラシを発見しました。

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日本人専用病院?しかも、ホテルの部屋まで往診に来てくれるらしい。

すごいなぁー!

しかも、診察を受けたら、その診察代の一部がカンボジアの子供たちの健康診断や歯磨き教室の支援のお金になるらしい!

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日本人の看護師さんが働いているらしい!!

チラシを読んで、この病院のフェイスブックページを読んで、どんどんどんどん興味が湧いて来て、気づいたらインタビューの申し込みのメールを送っていました!!

そしたら、なんとインタビューのOKがいただけ、このホテルドクターサービスで働く、看護師さんにインタビューさせていただくことができました!!

インタビュー記事の前に、カンボジアの医療情報について簡単に

医療水準

特定のプライベートクリニック(外来)で,日本のクリニックと同等の診療が可能。病院(入院)の場合は,一部私立病院を除き劣悪な環境なので,バンコク又は,シンガポールに搬送されることになる。プノンペンやシアムリアップ以外の地域では外国人向けのクリニックはない。医師を含め英語での意思疎通は困難。むしろフランス語を解する医療関係者のほうが多くみられる。        (外務省ホームページより)

平均寿命(WHO2016年度版)

カンボジア:68.7歳(123位/183ヶ国中)

日本:83.7 歳(1位/183ヶ国中)

新生児死亡率(WHO2016年版)

カンボジア:1.48%(73位/194ヶ国中) 

日本:0.09%( 191位/ 194ヶ国中)

1000人出産あたりのパーセンテージ
新生児は生後約1ヶ月未満の赤ん坊で、死亡率は1000人出産当たりに死亡する人数。

カンボジアの医療の歴史とポルポト政権

 カンボジアの医療は、戦慄すべき地獄のような歴史を振り返らずには先に進めません。ベトナム戦争の煽りを受けて、カンボジア国内は親米派(ロンノル派)と反米派(ポル・ポト派/クメール・ルージュ)に分裂し、内戦状態に陥りました。ベトナム戦争終戦後、ロンノル政権は崩壊し、ポル・ポトが政権を握ることになりました。ポル・ポトは極左の共産主義者で、資本主義や旧体制文化の名残のある人間を全て排除しようとしました。そこで、医師を始め教師や芸術家、技術者、将校に至るまで、技術を持つ者・知識人はすべて処刑の対象となり、大虐殺が行われました。その結果、子供が大人より高位につくようになり、子供医師が誕生しました。医療の知識も何もない子供が、興味本位で行う人体実験のような医療が蔓延し、助かる患者も命を落としていったといいます。38年前、クメール・ルージュから解放されたカンボジアでしたが、知識層が虐殺されており医療を施す人がいない、医療を教える人がいないという状況が待ち受けていました。このような歴史から、医療の発展が遅れたことは必至でした。

カンボジア医療におけるCHANGEとEXCHANGE | 中村康宏左記サイトより引用)

カンボジアが立憲民主制の国としてスタートした1993年、14歳以下の子供たちが人口の85%を占めていたそうです。この驚愕の人口比率からもわかるように、ポルポト政権下で多くの方が亡くなられました。

もともと4,000人いた医師のうち、生き残ったのはたった4名と言われています。この大虐殺では医師だけではなく、看護師、助産師も殺害されたため、医師だけでなく看護師・助産師もほぼゼロの状態からカンボジアの新たな医療の歴史は始まりました。

恥ずかしながら、私は今回カンボジアの医療の歴史を調べるまで、この「カンボジアの悪夢」について詳しく知りませんでした。

カンボジアの医療の発展の遅れ・国民の医療不信には、こんな悲しい歴史が関係していたことを知り、強い衝撃を受けました。

看護師インタビュー  カンボジア編 

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名前: 塚本 和子さん

出身:福岡県

看護師歴:17年

看護師になろうとう思われたきっかけはなんですか?

小学校の頃にマザーテレサの本を読んでこんなに人の命に関われる仕事ってすごいなと思って、それから看護師の道を目指しました。

海外で看護師として働こうと思ったきっかけは何ですか?

きっかけはJICAですね。20歳で看護師の免許をとった時に、地下鉄でJICAのポスターを見て、私が尊敬するマザーテレサの活動とJICAの活動がふっとリンクして 私がしたかったことはこれなんじゃないかなと 思ったんです。

でもその頃はまだ看護師に成り立てで、JICAの募集している看護師要件も満たしていない状態で。なので、まずは日本で看護師と頑張ろうと思って、総合病院で働き始めました。

でも、看護師で働き出したら、看護師が楽しくて、海外で働くという夢もいつしか遠くなっていっていました。

そんな中で、また夢にチャレンジしようと思うタイミングがあったんですか?

何か大きな出来事があったわけではないんですが、

35歳になった時に、ふと

「おばあちゃんになった時に自分の中夢は海外で働くことだったんだよ」

って誰かに話すのは嫌だなと、

挑戦せずにこのまま人生終わるのは嫌だと思ったんです。

それからJICAを受けました。

今のホテルドクターの仕事はJICAの活動ではなくNPO法人「HERO」の活動ですよね?

はいそうです。私結局JICAでは働かなかったんです。

私はもともと発展途上国の農村部などでで働いて、直接途上国の人の力になれるような仕事に就きたかったんです。でも、JICAからは私の看護師経歴を生かして病院管理とか看護管理とかそちらの方の仕事に就くことを勧められて・・・。自分の中で納得がいかなくて、どうしようか迷っている時に相談した友達がカンボジアで小学校を建設している友達がいるから紹介すると言ってくれて。その時紹介されたのがNPO法人「HERO」の代表の橋本だったんです。それで実際に会って話を聞いたら、カンボジアで病院を立てるから看護師さん探してるって話をされて。4時間くらい代表と話をしてこの人と一緒に仕事がしたいと思ってこの仕事に就くことを決めました。

今のお話を聞くと、カンボジアや HEROの活動とのすごい縁を感じますね

でも、実はこの話を聞くまでカンボジアがどこにあるかも知らなかったんです(笑)

 よく知らない、行ったこともないカンボジアという国で本当に自分が働けるのかどうかという不安もあったので、1人でカンボジアを旅したんです。

その時にカンボジアの人たちに惚れ込んで、私はこの人達のために働きたいなって、思ったんです。

カンボジア人たちのどんなところにに惚れ込んだんですか?

カンボジアの人は困っている人がいたら、助けてあげるのが当たり前なんです。

日本も同じだと思うんですが、思いと行動に少し「間」がありますよね。

例えば、目の前に困っている人がいても、実際に手を差し伸べる前に少し考えたり迷ったりして、「間」ができててしまうというか。

でも、カンボジアの人にはその「間」がないんです。

困っている人に手を差し伸べることが当たり前で、自然で、手を差し伸べることに迷いがない。そんなカンボジアの人たちの人柄に触れて、惚れ込んでしまったんです。

カンボジアの医療の現状について教えて下さい

やはり近隣のタイやベトナムに比べると医療水準は低いと言われています。

カンボジアの医療水準やに医療対する信頼がまだそこまで高くないからか、富裕層の方の中にはタイやベトナムに行って検査や治療をする人もいます。

医師免許は国家資格ですが、看護師のライセンス制度がまだない状態です。

看護学校卒業後に看護師として働けます。

カンボジアでの看護師のイメージはどんなものですか?

日本と同様、看護師=医療について専門の知識を持っている人と捉えられていると思います。

病院がないような地方の小さな村にも、ビレッジナースがいて、体調が、悪くなると村の人はそのビレッジナースに相談しに行ったりしているようです。

カンボジアの医療の遅れには「ポルポト政権」が関係していると聞いたのですが

そうですね。ポルポト政権下で医師・看護師・助産師など医療に携わる知識人が殺害され、ポルポト政権が終わった時には医療従事者がほぼゼロの状態だったようです。

カンボジアの医療は遅れていると言われていますが、そのようほぼゼロの状態から数十年でここまでくるのは本当に大変な苦労と努力があったと思います。

今一緒に働いているドクターもポルポトの時代を経験していて、ポルポト政権下で家族が適切な医療を受けることができなかった経験を経て、医者になってもっと沢山の人を助けたいという志を持った人です。カンボジアにいると、カンボジアの内戦やポルポトの時代が昔のことではなくリアルに感じます。

ホテルドクターサービスについて教えて下さい。

現在在籍してるスタッフは看護師(私)医師2名と事務スタッフ2名で、この5名で運営しています。

24時間365日患者さんからのコールを受け付けていて、その電話が鳴ればそこから私のホテルドクターサービスの仕事がスタートです。診察依頼の電話だけでなく、症状相談、今手持ちの薬があるんだが飲んでも大丈夫かなど、どんな相談でも受け付けています。基本的には症状がある患者さんの所へは往診に行きます、そこからドクター呼ぶかどうか決める場合もありますし、最初から医師と一緒に往診に行くこともあります。

私達のクリニックで対応できないような重症例の患者さんの場合は大きな病院を紹介したりもしています。往診、採血、点滴、感染症の検査などは私達もできますが、継続的に入院して様子を見た方が良い患者さんの場合は大きな病院を紹介して入院してもらいます。 私達だけて抱え込まず患者さんのために必要だと判断した時は適切な病院紹介する。それも私達ホテルドクターサービスの責任だと思っています。

受診される患者さんに多い疾患はなんですか?

風邪症状、急性胃腸炎、熱中症 などが多いです。

日本とカンボジア気候の違いやハードな旅程などで体調を崩される方が多い傾向にあります。

ホテルドクターサービスの仕事のやりがいはを感じるのはどんな時ですか?

「あの時あなたに電話して良かった」という患者さんの言葉を聞いた時ですね。

私たちが直接患者さん関われるのは、患者さんがカンボジアに滞在している間のみです。診察させてもらった患者さんが、その後お元気になられたのか、無事日本に帰れたのかなどいつも気になります。メールでその後の体調の確認などをさせてもらっているのですが、その時に「あの時あなたに電話して良かった」とか「元気になったらまたカンボジアに行きます。塚本さんに会いに行きます」という言葉をいただくことがあります。そんな言葉をいただくと、本当に嬉しいです。日本の病院で働いていた時とはまた違う、この仕事ならではのやりがいを感じます。

海外で病気になるのは心細いし、すごく不安が大きいと思うんです。でも私たちの病院があることで「あの人がいるから大丈夫だよね」と思って安心して旅してもらいたい。異国の地で頼れる存在になりたい「体調崩してもあの人に連絡したらどうにかなるね」という存在に。

私が大好きなカンボジアをみなさんに、安心して旅して欲しいんです。

 NPO法人HEROの活動についても教えて下さい。

HEROはカンボジアで無料で通える学校建設、スタディツアー、ビジネスインターンシップ、マイクロ養豚バンクなど様々な活動をしています。

この活動の中で、ホテルドクターサービスに関係しているのが、

「健康のおすそ分けプロジェクト」です。

ホテルドクターサービスを受診していただいた時に、支払っていただいた診療費の一部がカンボジアの子供達の健康診断や歯磨き教室の活動の資金になります。

「健康のおすそ分けプロジェクト」ってすごく素敵な活動ですね!病気になったことで誰かの役に立てるってなかなかないですよね

一人の患者さんに受診してもらったら、その診療費で6人の子供達が無料で健康診断を受けることができます。

ホテルドクターを受診して健康のおすそ分けプロジェクトを知ってくださった患者さんの中には「今回カンボジアで病気になって、大変だったけど。もっとカンボジアのことを知りたいし、子供達の力になりたいから、また元気になってカンボジアに戻ってきますと」言ってくれる患者さんもいます。その言葉をもらえるとすごく嬉しくなります。

健康診断とはどんなことをするんですか?

 健康診断は、 身長・体重・体温測定を行って、その後ドクターが診察して、成長発達や健康状態に異常がないかどうかをチェックします。

不調を訴える子供達に多い症状は

虫歯( 歯磨き習慣がない)

腹痛 (衛生環境の悪さ)

頭痛( 熱中症の影響の可能性)です。

虫歯痛、腹痛など訴えている子供には適切な薬を数日分処方します。

子供だけでなく、子供達のお母さんが健康相談に来たりすることもあります(笑 )

もちろんそんな時は診させてもらいます。

最後に今後の目標について教えてください!!

私達ホテルドクターサービスは、患者さんが体調について何か悩んだ時に、気軽に相談できる場所でありたいといつも思っています。私自身も患者さんにとって、異国の地で頼れる存在でありたいと思っています。

元気な人でも行きたくなるような病院を作ろう!!というのが私たちの目標です。

カンボジアで日本のスタイルとは違う、新しい医療を作っていきたいと思っています。

また、カンボジアの子供たちにも健康な身体を手に入れて、これからのいろいろな可能性を手に入れられるようサポートしていきたいです。

インタビューを終えて

海外で働く日本人看護師さんってどんな方なんだろう。きっとパワフルで、バイタリティに溢れていて、 サバサバしていて・・・。私は勝手に想像を膨らませていました。

でも、実際にお会いした塚本さんは、とっても穏やかで、柔らかい雰囲気で、私が勝手に想像していたイメージとは真逆の方でした。

でもその穏やかさの中に、大好きなカンボジアの人たち、子供たちのために、大好きなカンボジアに来てくれた日本人のために、自分のベストを尽くしていきたいという強い熱意を感じました。

カンボジアでゼロから病院を作り、運営していくのはとても大変なことだと思います。でもそれを「大変」ではなく「楽しい」と捉えて活動されていることにも感動しました。

塚本さんの話す言葉はどれも前向きで、愛にあふれていて、お話を聞いているだけで胸がいっぱいになりました。

そして、インタビューさせてもらいながら、自分がどんどん癒されていることに気がつきました。その時私は心の中で思いました「この方はまさに、マザーテレサだ!!」と。塚本さんの看護を受けた患者さんもみんなそう思っているに違いない、と私は確信しました。

ブログにも書きましたが、私はラオスで感染性胃腸炎でダウンしてしまいました。

異国で病気になることが、いかに不安で心細いか、身を持って経験しました。海外旅行保険に入っているのでキャッシュレスで病院受診はできるのですが、病院探し、弱っている体でのトゥクトゥク移動、医療者との英語でのやり取り、受診のハードルはかなり高い。ここがカンボジアだったらなぁ・・塚本さんがいてくれたらなぁ・・・とベットの中でひとり妄想していました。ホテルドクターサービズなら部屋まで往診に来てくれて、日本語で相談できるしその場で処方もしてもらえる。本当にありがたいサービスです。しかも病気になったことが悪い思い出ではなく、海外旅行で病気になったけど、そのおかげてカンボジアの子供たちに寄付がでた!という良い思い出に上書きできてしまう。病気になって改めてホテルドクターサービスの素晴らしさを実感したのでした。

お忙しい中、インタビューさせて下さった塚本さん、本当にありがとうございました!!塚本さんのお話を聞いて、たくさん刺激をいただき、私もこの旅で私にしかできないことを頑張っていこうという!!改めて決意しました。

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Hotel Doctor Service ~カンボジアシェムリアップの日本人専用病院~

NPO法人HERO

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